良いことをすると気持ちがいいと教える道徳の不思議
小学校1・2年生の道徳の教科書に次のようなイラストが載っています。
1 バスにお年寄りが乗ってきて座っている子供の前に立っている
2 子供は困った顔をしている
3 子供の隣に座っているオヤジは眠っている
さぁ、あなた(子供)はどうしますか。
という問いになっています。
一応みんなで答えを考えるようになっているのですが、初めから正解は決まっています。
お年寄りに「席を譲る」です。
まぁ、それは良しとしても、気になるのはページのタイトルです。
「良いことをすると気持ちがいいよ」
学校の先生は、この場面を子供にどうやって教えるのでしょうか。
「おじいちゃん、おばあちゃんに席を譲るのは良いことです。良いことをすると、気持ちがいいんですよ。気持ちがいいから、良いことはどんどんやりましょうね。」とでも言うのでしょうか。
お年寄りに限らず、必要に応じて席を譲るという行為は、そもそも人としてのマナーの問題です。
それを「良いことをすると気持ちがいい」と教えるのは、ちょっとポイントがずれていませんか。
マナーに理屈をつけて「席を譲ると気持ちがいいんだ」というのは、単なる押し付けでしかなく、大人の欺瞞だと思います。
足腰の弱い年配の人、妊婦さん、怪我をしている人、小さい子供を抱っこしているお母さん、こういう人に対する「思いやり」や「手助けの気持ち」などから「席を代わってあげよう」と思う訳です。
そして、子供ながらに勇気をもって実際に席を譲って、その人から「ありがとう」とお礼を言われて、はじめて「ああ、なんだかいいことをしたんだなぁ、ちょっと気分がいいなぁ」と感じるのではないでしょうか。
「気持ちがいい」というのは感情であり、先生が教えるものではないのです。
もしかすると、子供が運動会で炎天下のなか疲れ切ってヘトヘトになり、それでも塾へ行ってさらにぐったりしてバスで家に帰る途中、乗ってきたお年寄りに席を譲って「気持ちがいい」と感じるでしょうか。
また、ひねくれた年寄りにつかまって、席を譲った際に「年寄り扱いするな!」と怒られるかもしれません。
このように、「良いこと」をしたって「気持ちが良くない」ときだってある訳です。
一番大切なことは「良いことをすると気持ちがいいんだ」などと、誤魔化した言葉で理屈を語ったり、感情にまで踏み込んだりするのではなく、社会のルールやマナーをきちんと子供達に教えることです。
それが学校教育だと思いますが・・・