尊敬できない人にも敬語は必要なのかという問題
「なぜ、尊敬していない人にも敬語を使う必要があるのか」という疑問をよく耳にします。
たしかに、単に年齢が上だとか、入社が何年か先だという理由だけで、なぜ敬語を使わなければならないかと疑問を抱くのは、至極まっとうなことだと思います。
そこで、まず「敬語」について確認しておきたいことは「尊敬の念」と「敬語」の関係についてす。
敬語は「敬意」にもとづいて選択される言葉ですが、敬意とは必ずしも尊敬の気持ちだけではありません。
相手の「社会的な立場を尊重すること」も敬意の一つと考えられます。
仮に尊敬できないと感じられる人であっても、その人の立場や存在を認めようとすることは、ひとつの「敬意」であり、その気持ちを言葉で表すことは可能です。
それは、自分の気持ちを偽っていることにはなりません。
もしろ、社会一般的に敬語を使うべき場面で、敬語を使わないという選択は、社会人として相手に礼を欠く恐れがあることに留意しなければなりません。
ようするに、人として常識を持っている自分自身を表現するという側面が言葉にはあります。
言葉を「服装」に置き換えて考えると分かりやすいかもしれません。
たとえば、仲のいい友達とディスニーランドに遊びに出かけるとしましょう。
そのとき、カチカチのスーツにネクタイという人はいないはずです。
逆に大事な仕事の商談の場にTシャツ姿で現れる人もいません。
なぜなら、場面にふさわしい洋服を選択する、すなわち「自分はどう見られるか」「相手に失礼はないか」ということを意識している訳です。
言葉もこれと同じです。
敬語は絶対的なものという固定的な考え方ではなく、その都度、人間関係や場の状況に応じて、自らの気持ちに即した適切な言葉遣いを主体的に選ぶ。
すなわち、人間関係を円滑にするための「自己表現」という考えを目指したい。
それでも、敬語を使う意義を見出せないという方は、もうこれしかありません。
・敬語を使うのは相手との間に距離を置くため・・・だと。
ようするに、
「俺はあんたと、近しい間柄じゃねーよ」的な思考です。 ・・・あくまでも心の声ですよ。
敬語というのは、相手との間に距離をつくります。
たとえば、普段、仲のいい夫婦でも喧嘩になったりすると、
夫:あ、そうですか、どうぞ出て行ってください!
妻:分かりました。私、実家に帰らせていただきます
やけによそよそしい言葉使いになります。
これは相手と離れたい・距離をつくりたいという意識が敬語になって現れるのです。
注意しなければならないのは、敬意とは言葉そのものだけでなく、喋り方や所作にも表れるものです。そこはお忘れないように。
いかがでしょうか。